Poem / Photography 「揺るぎないもの」

揺るぎないもの
                 
かたく何かを誓ったかのように
勇気付けられる言葉がある

それは腹の奥底に潜めて
また這い上がる力となる

成長するとは
際限がない事

休んでもまた歩き出す
もうダメだと思っても 手を差し伸べてくれる人が居る

「誇り」
それを持って生きること
困難だった

叩きのめされた自尊心を取り戻す為の作業
そこには沢山の人たちの「愛」があった
「揺るぎないもの」 もう一度…

比べる事も
悲観する事もない
ありのままで

例えまたつまずいても
必ずまた立ち上がる
「生きる力」

「愛」の持つ力をあなどってはいけない

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「写真詩集」

Poem / Photography 「荒れる心」

荒れる心

津波は私の心にも襲っていた
冷たい雨の降る立秋
私は急いで出したカーディガンを羽織って
ベッドに横たわっていた

不安だった
沈黙の中「生きていていいのかな?」と問おうてしまって
その答えが見つからずに
薬を飲んだ

一人な気がした
この世界で
この箱の中で
一人きり 全てから切り離されたかのように

夢を見ているかのようでもあった
ただ 波打つ私の心臓は
大人しくはなかった
大丈夫だろうか?

何度も電話をかけたあの人のことが心配だった
連絡の返事のない人のことも心配だった
生きる理由を見失いそうで
心の波は大きく揺れていた

外気にさらされたかのような
生の心臓は冷え切っていて
そこに流れ込む雨の冷たさは
猛暑の後の急な冷え込みに縮まる想いもしていた

津波…
全てを流し 連れ去ってしまう津波
その本当の恐ろしさも知らずに
私は家猫と同じように
本能を忘れて心を病んだ

荒れる心が
たった一つの灯りを見つければ
それだけでいいと
筆を取った

ただそれだけのことだった

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「揺るぎないもの」

Poem / Photography 「リアル」

リアル

根こそぎ殺(や)られたんだ
この世界のリアルからの切断

何かが欠落したまま
私は今を生きる

あまりに根が深く
どこに向かって行けばいいのかわからない

ただ「生きたい」
もう死んだように息をしているだけの自分は嫌だ

見つめて来た
自分の過去も内面も

暗がりの中でも幸福の中でも
痛みや涙の中でも

弱い私であっても
いつももう一人の私が見つめていた

「もっとリアルに」
「もっと感情を揺さぶって」と

遠くから声が聞こえる
「貴女をここで終わらせる訳にはいかない」と

突破したい
私を囲っている壁全てぶち壊して

リアルへ…

もう一歩先へ
もう一段上へ

自分の脚で
超えてゆきたい

殺(や)られた精神は取り戻せない
それでも諦めない

まだ間に合うから
気付く事が出来たから

らっきょの皮むきでもいい
最後に何が残るのか見てみたい

魂を膨張させて
この壁をぶち破る

見えてくるのは
きっといつか見た風景

それでいい
懐かしさと共に私は生まれ変わる

内から外へ
そしてまた内へ

もっと遠くへ
もっと近くへ

リアルになる

私がなる
本当に「死す」前に
なるんだ

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「生き抜くということ」

生き抜くということ

やっとの思いで
狂気から抜け出したのだ
生き抜かなければ

残せるものを残して
生きたい
愛を育みたい

絶望して
全て終わりにしたくなる時も
まだ生きろと導かれる何かがある

生きたいのに
無惨に散る命
儚い命

どん底から這い上がった今
私には生きる義務がある
支え愛してくれる人たちがいる

生きたくても
生きてはゆけない
そんな人々を想う

強く 強くならなくては
いつかそんな人々に捧げる詩が書けるように
祈り続けなくては

無数の魂が取り巻く中
まだ生きたいのだと
みなぎる生命力を感じて

例え明日死んでも
悔いのないように
小さな幸せを噛み締めて

心に感動と愛を
身体は健やかに
日々息をしていることに感謝をして

きっと今からでも出来る

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「祈りの輪っか」

祈りの輪っか

一つの輪っかが
一つの輪っかと繋がる

それがまた両方から
もう二つと繋がる

広がる思考
深まる情

輪っかは一つ一つと繋がり
柔らかな鎖を作る

私たちを苦しめるものではなく
きちんと愛で結ぶもの

弱い自分も
情けない自分も
ありのまま全てを
愛し平安を祈る時
輪っかは全世界へと広がる

国境も言語も越えて
文化も人種も乗り越えて
一つの大きな輪っかが出来る

一人で居ても
家族と居ても
恋人や友達と居ても

一つの思考から
全世界へと繋がることが出来る
望めば出来る
祈りの力とはそういうもの

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「生き抜くということ」

Poem / Photography 「春の日」

春の日

風のない朝
心に春風が吹いた

夜中に目が覚めて
眠れなくなって  
昨夜のあの人の言葉を思い出していた

憂鬱だった日々に
舞い降りた
まるで散って行く桜の花びらのように

共に歩けますか?
季節を超えて一緒に

希望がいつやって来るのか
誰もわからない
失望も同じ

それでも前を向こうとする心が
感謝をする心を
無くさなければ 春風も心地よく

胸に温かさを感じながら
眺めた 春の空

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「祈りの輪っか」

Poem / Photography 「脱皮」

脱皮

「普通」と言う言葉を基準に人の歩みは語れない

どれ一つとして同じでなく
どれ一つとして闇が無いわけでもなく
それぞれが抱える傷や痛みも
喜びも幸せも形は違う

「生」とは流動的で
未来に何が起こるのかもわからない

常に警戒しても生きられないが
油断は禁物
そして豊かな幸福な時間は大切に

初春の暖かな光で
部屋が暖まった時
吐き気の後の清々しさのような
熱気に満ちた夏がやって来ると思うと
うんざりしながらも幸せを感じる

汗をかき
シャワーをし
全てを流して
皮膚で呼吸をする

私は病気からも
貴方からも脱皮をする

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「春の日」

Poem / Photography 「さよならはない別れ」

さよならはない別れ

いくらステロイド投与のせいでムーンフェイスになった父の写真を見ても
いくら人工呼吸器を付けた父の写真を見ても
いくら綺麗に化粧されて横たわる父の写真を見ても

父が居ないとは思えないんだ

あの日 父が「死」と言う境界線の向こうに逝ったとは分からずにいる
毎日、私は父を感じ 共に生きている

長野松本の秋は少し早く
八月だと思ういうのに 夕方には鈴虫が鳴いていた
ホテルと病院を行き来しながら父の最期を共に過ごす

東京の病院で「死」の一年前に余命宣告を受け
それでも父は長野に戻った
酸素ボンベと要介護で生活する

ちょうど一年後 父は再入院して
私は過去最大に膨張した身体で松本まで飛んで行く
父の意識はしっかりしていた

どのくらい滞在したのか
どのくらい一緒にいられたのか
記憶が断片的で良く思い出せない

とにかく父の前では泣かないように
父が伝えたい事を受け止められるように
それだけに集中していた

苦しそうに話す父だったが
優しさとユーモアは変わらずにあった
その毅然とした態度は今でも焼き付いている

亡くなる三日程前に
達筆な字で葬儀にかけて欲しい曲をメモする
私は確かにそれを受け取った

そして次の日
私がホテルに帰る前に
手を握り 「パパが死んでも摩耶ちゃんと生きるからね」と

握力の弱まったその手で確かに言った 
その時ばかりは私も涙が溢れて止まらなかった
とにかくもう苦しんではほしくはなかった

病院の外へ出ると
裏道で泣き崩れてしまって
行き場のない想いを天に向け

滲む目の前を何度も確かめながら
ホテルへ戻ると泣いてばかりはいられないと覚悟を決める
父は必死に生きているから

その日の夜 父は逝った
延命治療はしないと言っていた父
主治医の「もう限界ですか?」という言葉に小さく頷いたらしい

連絡を受け病院へタクシーを飛ばした時には
まぁるく小さくなった父を ただただ眺めて泣いた
その日から私はさよならの出来ない別れをした

数日前の父の言葉のように
父は確かに私と生きている

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「脱皮」

Poem / Photography 「道」

一度は共に歩んだ道も
ある時から道が二つに分かれ
「俺はこっち」
「私はこっち」と
お互いが結んだ手を離すことがある

一人ずつ想い出の回想の旅に出たあとは
随分と距離は離れて
いつしか自分の選んだ道を真っ直ぐと歩き
お互いの幸せを願っていた

心だけは結ばれたまま
違う景色を見る
いつかその話が出来たらいいななんて
目に焼き付けて

もしかしたら 新しく家族を迎えたかもしれない
もしかしたら 苦しくて苦しくて助けを求めているかもしれない
それでも確実に広がってしまった道の間を
二人の心が結び また一歩を踏み出す勇気となる

違う風景を見ながら歩み
それでもどちらかが「死す時」
もしかしたら魂だけは すぐ側に

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「さよならはない別れ」

Poem / Photography 「リキッド」

「リキッド」
  
溢れるコップの液体を
無理やりねじ伏せるように
グッと拳を握って耐えた

その液体は負けじと溢れ出し
私の身体と心に染み込んで来て
拳までたどり着いた時

そこにあったのは
諦めと言う 安堵

負けやしないさ
何度と味わった
蝕まれる感情に
もう負けたりしないんだ

猫たちが暖めてくれたベッドに潜り込むと
今日一日が平和であったことに感謝出来た

負けても良いんだと
そこに広がる平たんだけれど
空や海や大草原に似た景色が見えたから

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「道」