Variation of Hungarian Traditional “Kis kece lányom”, Ferenc Snétberger , g., Richard Bona, b., v.
Kis kece lányomという、もともとは素朴でどこか土の匂いを感じさせる民謡が、ここまで洗練された音楽へと変容するのか――まず、その変化の振れ幅に心を奪われます。
Ferenc Snétbergerのギターは、語りすぎない。音数を抑えながらも、一音一音が深く沈み、余白に意味を持たせる演奏です。いわゆる技巧の誇示ではなく、「間」を聴かせるタイプの音楽で、聴き手に想像の余地を残す。その静けさは、まるで夕暮れの平原に立つような感覚があります。
一方で、Richard Bonaは対照的に、生命の躍動を持ち込んできます。ベースは単なる伴奏ではなく、旋律のもう一つの声として歌っている。ときに人の声のように、あるいは祈りのように響く。そのアフリカ的なリズム感が、ハンガリーの旋律と不思議なほど自然に溶け合うのが印象的です。
この演奏の面白さは、「民族性の衝突」ではなく、「民族性の融解」にあります。東欧の哀愁とアフリカのリズムがぶつかるのではなく、互いを侵食しながら新しい質感を生み出している。だからこそ、どちらの文化にも属しきらない、どこか“境界にある音楽”として立ち上がってくる。
そして、全体に漂うのは「懐かしさ」ではなく、「記憶の再構築」のような感覚です。原曲を知っている人にとっては、その輪郭が遠くに見え隠れしながら、まったく別の物語へと導かれていく。知らない人にとっても、なぜか胸の奥に触れる何かがある。
率直に言えば、これは“聴く音楽”というより、“時間を味わう音楽”です。派手さや即効性はありませんが、じわじわと深く染み込み、気づけば心のどこかに残っている。そんな作品だと感じました。


















