
鏡に映る像




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私が<follow>する人の方がずっと多くてかっこ悪いのです。
人は、どこかに戻ろうとするとき、「もとに」という言葉をそっと胸の内につぶやく。
たとえば旅先で、ふと家の匂いを思い出すとき。学生時代の友人に再会して、昔の口ぐせが自然と出てしまうとき。自分を取り戻したいと思った瞬間にも、私たちは「もとに」帰りたくなる。
それは必ずしも、具体的な場所ではない。時間だったり、人だったり、あるいは声や手触り、ひとつの感情であることもある。
かつて私は、季節の変わり目にだけ会う祖母の庭の金木犀の香りを、ある秋の日に都会の路地でふと感じ、涙がにじんだことがある。香りが導いたのは「もとに」あった、幼い頃の記憶、祖母の声、手を引かれて歩いた道、何も知らずに笑っていた自分だった。
「もとに戻る」という行為は、決して後ろ向きではない。むしろ、その人の根っこを確認し、自分の現在地を見直す行為だ。大切なものが何かを見失いそうなとき、過去の自分に手を伸ばすことがある。それは、未来に進むために必要な小さな儀式なのかもしれない。
人は一生のうちに、何度でも「もとに」帰る。自分を確かめ、あたたかさを思い出し、再び歩き出すために。
「あなたはどこに戻る?」と聞かれたら
ちょっと恥ずかしいが
「ここに」戻るというのが、正直なところ。

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「脱ぐのは、着物ではありません・・恥じらいと孤独だ。」
静まり返ったスタジオに、午後の光がやわらかく差し込んでいた。白い壁、無機質な床、その中央に置かれた一脚の椅子。彼女は入口で一瞬立ち止まり、小さく息を整えた。初めてのヌード撮影――胸の奥で、期待と不安がせめぎ合っている。
写真家は機材の準備を終えると、彼女の方へ歩み寄った。穏やかな眼差しで、急かすことなく言葉を置く。
「脱ぐのは、着物ではありません。」
彼女の指先がわずかに強ばる。写真家は続けた。
「これまでに身に付けた常識という既成観念です。真に脱ぐのは、恥じらいと孤独だ。」
その言葉は、命令ではなく、そっと差し出された鍵のようだった。彼女は目を伏せ、ゆっくりと呼吸する。心の中に重ねてきた「こうあるべき」が、薄紙のように剥がれていくのを感じた。
衣擦れの音が小さく響き、やがて沈黙が戻る。だが、それは先ほどの緊張の沈黙ではない。何かを手放した後の、澄んだ静けさだった。
「大丈夫。あなたのままで。」
シャッターの音が、柔らかなリズムを刻む。ポーズを作ろうとした瞬間、彼女はふと力を抜いた。飾らない姿勢、隠さない視線。そこにあったのは裸身ではなく、殻を脱いだ存在そのものだった。
撮影が進むにつれ、彼女の表情は変わっていく。怖れの影が薄れ、代わりに静かな確信が宿る。光は肌をなぞり、空気は彼女を包み、時間さえ味方のように流れた。
最後の一枚を撮り終えたとき、写真家は深く頷いた。
彼女はそっと微笑む。何を脱いだのか、もうはっきりとわかっていた。椅子の上に残されたのは衣服だけ。心には、軽やかな自由だけが残っていた。
