Poem / Photography 「春の日」

春の日

風のない朝
心に春風が吹いた

夜中に目が覚めて
眠れなくなって  
昨夜のあの人の言葉を思い出していた

憂鬱だった日々に
舞い降りた
まるで散って行く桜の花びらのように

共に歩けますか?
季節を超えて一緒に

希望がいつやって来るのか
誰もわからない
失望も同じ

それでも前を向こうとする心が
感謝をする心を
無くさなければ 春風も心地よく

胸に温かさを感じながら
眺めた 春の空

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「祈りの輪っか」

Poem / Photography 「脱皮」

脱皮

「普通」と言う言葉を基準に人の歩みは語れない

どれ一つとして同じでなく
どれ一つとして闇が無いわけでもなく
それぞれが抱える傷や痛みも
喜びも幸せも形は違う

「生」とは流動的で
未来に何が起こるのかもわからない

常に警戒しても生きられないが
油断は禁物
そして豊かな幸福な時間は大切に

初春の暖かな光で
部屋が暖まった時
吐き気の後の清々しさのような
熱気に満ちた夏がやって来ると思うと
うんざりしながらも幸せを感じる

汗をかき
シャワーをし
全てを流して
皮膚で呼吸をする

私は病気からも
貴方からも脱皮をする

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「春の日」

Poem / Photography 「さよならはない別れ」

さよならはない別れ

いくらステロイド投与のせいでムーンフェイスになった父の写真を見ても
いくら人工呼吸器を付けた父の写真を見ても
いくら綺麗に化粧されて横たわる父の写真を見ても

父が居ないとは思えないんだ

あの日 父が「死」と言う境界線の向こうに逝ったとは分からずにいる
毎日、私は父を感じ 共に生きている

長野松本の秋は少し早く
八月だと思ういうのに 夕方には鈴虫が鳴いていた
ホテルと病院を行き来しながら父の最期を共に過ごす

東京の病院で「死」の一年前に余命宣告を受け
それでも父は長野に戻った
酸素ボンベと要介護で生活する

ちょうど一年後 父は再入院して
私は過去最大に膨張した身体で松本まで飛んで行く
父の意識はしっかりしていた

どのくらい滞在したのか
どのくらい一緒にいられたのか
記憶が断片的で良く思い出せない

とにかく父の前では泣かないように
父が伝えたい事を受け止められるように
それだけに集中していた

苦しそうに話す父だったが
優しさとユーモアは変わらずにあった
その毅然とした態度は今でも焼き付いている

亡くなる三日程前に
達筆な字で葬儀にかけて欲しい曲をメモする
私は確かにそれを受け取った

そして次の日
私がホテルに帰る前に
手を握り 「パパが死んでも摩耶ちゃんと生きるからね」と

握力の弱まったその手で確かに言った 
その時ばかりは私も涙が溢れて止まらなかった
とにかくもう苦しんではほしくはなかった

病院の外へ出ると
裏道で泣き崩れてしまって
行き場のない想いを天に向け

滲む目の前を何度も確かめながら
ホテルへ戻ると泣いてばかりはいられないと覚悟を決める
父は必死に生きているから

その日の夜 父は逝った
延命治療はしないと言っていた父
主治医の「もう限界ですか?」という言葉に小さく頷いたらしい

連絡を受け病院へタクシーを飛ばした時には
まぁるく小さくなった父を ただただ眺めて泣いた
その日から私はさよならの出来ない別れをした

数日前の父の言葉のように
父は確かに私と生きている

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「脱皮」

Poem / Photography 「道」

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道

一度は共に歩んだ道も
ある時から道が二つに分かれ
「俺はこっち」
「私はこっち」と
お互いが結んだ手を離すことがある

一人ずつ想い出の回想の旅に出たあとは
随分と距離は離れて
いつしか自分の選んだ道を真っ直ぐと歩き
お互いの幸せを願っていた

心だけは結ばれたまま
違う景色を見る
いつかその話が出来たらいいななんて
目に焼き付けて

もしかしたら 新しく家族を迎えたかもしれない
もしかしたら 苦しくて苦しくて助けを求めているかもしれない
それでも確実に広がってしまった道の間を
二人の心が結び また一歩を踏み出す勇気となる

違う風景を見ながら歩み
それでもどちらかが「死す時」
もしかしたら魂だけは すぐ側に

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「さよならはない別れ」

Poem / Photography 「リキッド」

「リキッド」
  
溢れるコップの液体を
無理やりねじ伏せるように
グッと拳を握って耐えた

その液体は負けじと溢れ出し
私の身体と心に染み込んで来て
拳までたどり着いた時

そこにあったのは
諦めと言う 安堵

負けやしないさ
何度と味わった
蝕まれる感情に
もう負けたりしないんだ

猫たちが暖めてくれたベッドに潜り込むと
今日一日が平和であったことに感謝出来た

負けても良いんだと
そこに広がる平たんだけれど
空や海や大草原に似た景色が見えたから

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「道」

Poem / Photography 「底」

底

何かが底を付いた時
しばらくそこに定着して上を見上げる

此処は安定して良いねと
聞こえそうで それでいて更に下があるかのような恐怖

「どんな状況下でも詩を書き続けなさい」と
父が言っているように思えて

底をテーブルに書いてみる
透明なそのテーブルが更に下を映し出すから
ハジにつかまって何とか踏ん張る

ー落ちる!ー
ふとガタついた神経が
テーブルのハジから私を更に下へと追いやる

涙だけが浮上して行き
ドサッと また下に落ちる

痛めた足腰が感覚を取り戻すと
また上を見上げる

私は上に向かっているのか?
それとも下か?

透き通ったその場所でうずくまりながら
ふと上も下もないと…

ただこの大地に足をつけ
遥か上の空を見るのか 
それとも足元を眺めるのか

その違いだと

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「リキッド」

「夢…そして時間」

「夢…そして時間」

夢を見て 起きて
また眠った時 
夢の続きを見た

どんな意味があるのだろう?
続きを見たくても見れない夢ばかりなのに

結びつき 対人関係
破局 生きるエネルギー
調べれば色々出てきた

一つ言えるのは
目覚めた時に心地よかったこと

私は夢の中で生きて
現実で死んでいたから

こもりたかった
人が怖くなって 
もう表には出たくないと
また感じていた

なのに あの指輪
不思議な色に輝いて
時計が付いていた

「時間」 最近考えていたこと

心身の傷を癒し
嫌悪を無くし
愛情を深め
想い出をキレイにし

そんな「時間」がわかる時計の付いた指輪を貰った

夢の中では時間には意味がなかったけれど
現実で私は時間を気にして生活している
何もなくとも 常に時間を見ている

気付けば後十年生きたら五十五歳だ
その頃 母もネコたちもいるだろうか?
この十年を思えば 「時間」は確実に加速していて
このままジェットコースターのように急速に過ぎて行くのだろうか?

夢…
幸せな夢…
まだ見たい夢…
まだ掴みたい夢…

どうか時間よ
私に成長と幸せを感じる事の出来る心を

どうか時間よ
これ以上の最悪の事態を止めてほしい

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 11

Poem / Photography 「写真詩集」

model : Maya Inoue

Poem / Photography 「写真詩集」

「臨時休業」

行くあてなどなかった
ただトボトボと歩いて
いつもの喫茶店に行ければ
それで良かった

家から出たかった
少し秋めいた風に当たりたかった
夕焼けを見て
深呼吸をして

辿り着けば
喫茶店のシャッターは下りていて
「本日臨時休業」とあった
涼みたかったのにこれだ

ぷらぷらとコンビニに入り
少し涼みがてら商品を見る
見慣れたおにぎりやサンドイッチ
お腹が空いていたんだ

私はその間ずっと
ボーッとしていて
現実と異空間の狭間で
取り残された様な感覚になっていた

交差する思考や想いが
時に人を酷く独りにする
顔だけは知っている店員さんに商品を差し出し
「袋もお願いします」と言う

自動的にポイントカードを出して
会計を済ませると
またふらふらと表に出る
ーやけに蒸すな…ー

今日会ったのは
宅配のお兄さんと
コンビニの店員さんか
すれ違う人たちとは目を合わさなかったもんな

誰のことも呼ばなかった
頭も心も空っぽ
そんな日があっても良いと思った
独りはじっくり味わえば良い

それでも想ってくれる人たちがいることを知っていて
私の幸せや健康を気にかけてくれる人たちがいて
見えない所でいつも祈ってくれていて
それを感じているから文句などないのだ

腰がきしむの感じながら
私は帰ったら冷水シャワーを浴びようと考えていた
台風は本当に来るのだろうか?
キレイな夕焼けだ

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 2

Poem / Photography 「お風呂」

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

「お風呂」

この部屋のお風呂が好きだった

小窓がついていて
土曜の昼間の日差しや
雨の日のポツポツ音
じーっとお湯に浸かりながら
外界を感じていた

冬場の夜
寝る前に身体を暖めてくれて
初夏の少し涼しい昼間
冷えたお水を美味しく飲ませてくれて

建て付けが古いせいで
立派なお風呂ではなかったかもしれない
それでも私はこのお風呂がとても好きだった

寂しい時は耳まで浸かって
お湯の鼓動を聞いた
気分の良い時は
お気に入りの入浴剤を入れた

不思議と掃除も苦ではなく
どの部屋よりもここのお風呂に沢山入った

またいつか戻って来るのかな?
新しい環境で私はまたお風呂が好きになるのかな?

その日その日
その時間その時間で
違う顔を見せてくれたここのお風呂に
もうすぐさよならだ

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「底」

Poem / Photography 「幾億回の…」

「幾億回の…」

一日中死んだように薬を飲んで寝倒した夜
やっとシャワーを浴びて
いつも以上に強く身体を擦った後
初夏の夜の風に当たりながら
ふと幸福を感じた

夜に流れるメロディ
冷えた水
隣で眠る猫たち
明日が雨でも関係ない
今 私が少しの幸せを感じられたのなら
感謝の念を持ってまた眠りに付けるのなら

それでいい

何度目に立ち上がった
何度目に感謝した
生きている限り終わりなんてない
全てに終わりがあり
始まりもまた ある

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 12