写真詩集 「温もり」

「温もり」

昨夜の貴方の手の感触を抱いたまま目覚める朝
空は少し陰り
ここの所の暑さを少し和らげていた

分かり合えない事が多くて
何年もかけて歩み寄って
それでも離れてしまって
もう冷めた仲だと
お互いに思っていた時

二人の歩む道はまた交差した

背負う物が多くて
ストレスでギスギスして
思いやる気持ちも忘れかけていたのに
まるでずっと一緒だったかのように

リビングに行くと
目覚めた貴方がタバコを手に「おはよう」と言う
私も「おはよう」と言う
そんな平凡な事で
私の一日は幸福に包まれた

ただ 過度な期待はしない
ヒステリックにもならない
静かに誓った心には
少し成長した私が居た

書けなかった
もう貴方の事は書かないと
そう決めたかのように

どんな夢を見たのかも聞くのを忘れて
貴方を見送ると
私はまた日常に戻る

ここに貴方の事を記して

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「シューレース」