「被写体」である前に、「表現者」であれ

「被写体」である前に、「表現者」であれ

アート写真において最も重要なのは、「表現としての一貫性と深さ」である。美しさや完成度は重要であっても、それが単なる見栄えの良さに終始していては、芸術としての価値を持ち得ない。

この文脈において、フォトモデルは写真家の「意図を写し出す鏡」であると同時に、自らの身体性・精神性を通じて「新たな物語を提案する存在」でもある。つまり、受動的な存在ではなく、能動的な創造の担い手である。

アート写真では、構図や照明、衣装が曖昧で抽象的であったり、撮影意図が一見わかりにくいことも少なくない。だからこそ、モデルにはその空間の中で「意味を生み出す能力」が求められる。「何を表現しているのかわからない」状況においても、視線の方向、手指の動き、呼吸の深さ一つで、鑑賞者の想像を喚起できる表現者であること。それが、アート写真のモデルとしての第一の心得である。