フォトエッセイ「大地と情熱の形象」

大地と情熱の形象

石の彫像に宿る生命。それが私がロダンの裸婦像を目の当たりにしたときに抱いた感覚だった。彫刻において人間の肉体を超越的に表現するのは容易ではない。しかし、ロダンはそれを可能にした。それは、単なる美の表現ではなく、情熱、欲望、苦悩といった人間の根源的な感情の凝縮体なのだ。

この彫像の前に立つと、まずその豊かな曲線が目に飛び込んでくる。滑らかで、かつ大胆な線。それは大地の形状そのものを思わせる。丸みを帯びたヒップ、引き締まった腹部、そして緊張感の漂う肩のライン。彼の手が石に刻み込んだ形は、人体が持つ一つの理想でありながら、決して抽象的ではない。その存在感はあまりにもリアルで、まるで石が呼吸しているようだ。

彫刻と時間

この裸婦像の持つもう一つの驚異は、時代を超えた普遍性だ。ロダンの彫刻は、決して彼が生きた19世紀末のフランスだけにとどまるものではない。それは、古代ギリシャの彫刻にも通じる調和を持ちながらも、近代のエネルギーを湛えている。彼が描いた女性の姿は、まるで時空を超えた旅人のように、異なる時代をつなぐ架け橋となっている。

この彫像を前にして、私は時間の感覚を失う。20世紀初頭に作られたはずのこの作品は、私の目には永遠のものであるように映る。石の中に閉じ込められた一瞬が、今この瞬間に蘇っているようだ。

美と欲望の境界

ロダンの裸婦像の前に立つとき、その芸術的価値に心を奪われると同時に、視線が彫像の肉体に対する欲望を感じることを否定することはできない。芸術作品が人間の本能に触れる瞬間が、ここにはある。それは決して恥じるべき感覚ではなく、むしろ作品が持つ力を証明するものだ。

この裸婦像は、単に鑑賞者の目を楽しませるだけではない。それは、見る者の心を動かし、内なる情熱を呼び覚ます。それは単なる彫刻ではなく、一つの生きた存在なのだ。

芸術の頂点

ロダンの裸婦像を前にして、私はこう思う――これこそが芸術の頂点だと。美しい肉体の形状を捉えるだけでなく、それに感情と魂を宿らせること。ロダンが私たちに見せてくれるのは、肉体が単なる器でないということだ。それは、私たちが生きること、愛すること、苦しむこと、そのすべての記録なのだ。

そして私は、この裸婦像の前でこう願わずにはいられない。もしも、この石に触れることが許されるならば、その冷たさの奥に宿る永遠の熱を感じ取ることができるのだろうか、と。

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Tetsuro Higashi

I was born and brought up in Tokyo Japan. Now I teach mathematics . At age 20 I took up painting. I took up taking photos before 5 years. I have learned taking photos by myself . I grew up while watching ukiyo-e and have learned a lot from Sandro Botticelli , Pablo Picasso. Studying works of Rembrandt Hamensz . Van Rijn, I make up the light and shadow. * INTERNATIONAL PHOTO EXPO 2015 / 26 February ~ 31 March Piramid Sanat Istanbul, Turkey * World Contemporary Art 2015 Nobember Piramid Sanat Istanbul, Turkey * Festival Europeen de la Photo de Nu 06 ~ 16 May 2016 Solo exposition at palais de l archeveche arles, France *2016 Photo Beijing 13~26th October *Sponsored by Tetsuya Fukui 23 February - 02 March 2019 Cafe & Bar Reverse in Ginza,Tokyo,Japan *Salon de la Photo de Paris 8th – 10th – 11th 2019 directed by Rachel Hardouin *Photo Expo Setagaya April 2020 in Galerie #1317 *Exhibition NAKED 2020 in Himeji    Produce : Akiko Shinmura      Event Organizer : Audience Aresorate December 1th ~ 14th  2020

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