フォトエッセイ「革命の国の民として・・」

かつて私は、自分が世界でもっとも自由な国に生きていると信じていた。共和国万歳!自由、平等、博愛…ああ、なんと気高い響きだろうか。朝はクロワッサン、昼には赤ワイン、夜にはサルトルを読みながら革命について語る。私は自分を、精神的にも生活的にも、完全に「解放された男」だと思っていた。

だが、ある日、冷蔵庫に豆乳が切れていたことで妻に30分説教されたとき、ふと気が付いた。「あれ?僕って、本当に自由なのか?」

まず、パリに住むということは、朝8時に地下鉄でサーディン缶の中身のように押しつぶされることを意味する。人間というより、社会の歯車の一つ。心の中では「ジャン=ポール、君はこれを想像していたか?」と叫んでいる。でも誰も聞いていない。彼らもまた、スマホと不安に縛られている。

職場では「言いたいことを言える雰囲気」があるふりをして、実際には何も言えない。「君の意見を聞かせて」と言われたあとに、本当に意見を言った日には、ランチのあとで部長の眉毛がひとつ上がる。それが翌週の評価にどう影響するかを、私はもう知っている。だから私は笑って「まったくその通りですね、素晴らしいアイデアです」と言う。

私は自由な市民ではなく、エスプレッソと礼儀正しさと建前に飼い慣らされた中年男に過ぎなかった。

さらにSNS。私は他人の「リアルな生活」を見ることで、ますます自分の非リアルさを実感する。南仏でバカンスを楽しむ同級生。完璧な朝食と笑顔の子ども。私は?3日連続でレトルトのラザニア。写真なんて撮れるわけがない。だがそれでも、私は毎日「いいね」を押す。機械のように。いや、機械よりもっと無意識に。

こうして気が付けば、私は「自由」の名のもとに、社会的義務、期待、自分で作ったイメージ、すべてに縛られていた。自分で自分を雁字搦めにしていたのだ。

皮肉なことに、私は革命の国の民として、最も革命から遠い存在になっていた。

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Tetsuro Higashi

I was born and brought up in Tokyo Japan. Now I teach mathematics . At age 20 I took up painting. I took up taking photos before 5 years. I have learned taking photos by myself . I grew up while watching ukiyo-e and have learned a lot from Sandro Botticelli , Pablo Picasso. Studying works of Rembrandt Hamensz . Van Rijn, I make up the light and shadow. * INTERNATIONAL PHOTO EXPO 2015 / 26 February ~ 31 March Piramid Sanat Istanbul, Turkey * World Contemporary Art 2015 Nobember Piramid Sanat Istanbul, Turkey * Festival Europeen de la Photo de Nu 06 ~ 16 May 2016 Solo exposition at palais de l archeveche arles, France *2016 Photo Beijing 13~26th October *Sponsored by Tetsuya Fukui 23 February - 02 March 2019 Cafe & Bar Reverse in Ginza,Tokyo,Japan *Salon de la Photo de Paris 8th – 10th – 11th 2019 directed by Rachel Hardouin *Photo Expo Setagaya April 2020 in Galerie #1317 *Exhibition NAKED 2020 in Himeji    Produce : Akiko Shinmura      Event Organizer : Audience Aresorate December 1th ~ 14th  2020

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