
第1章 予期せぬ視線
大学の講義が終わり、春の陽射しが差し込む廊下を歩く。昼食をとるため、友人とカフェテリアに向かおうとしていたその時だった。
目の前に、ふと視線を奪われるものが現れた。
彼女は同じ学部の先輩、村瀬玲奈。ショートカットの髪が軽やかに揺れ、白いブラウスにベージュのスカートというシンプルな服装が清楚な雰囲気を醸し出している。
しかし、問題は彼女の服ではなかった。
その日、彼女は肌に馴染むようなヌードカラーのランジェリーを身に着けていたのだ。いや、厳密にはそれを直接見たわけではない。ただ、春の柔らかい陽光が、薄手のブラウスを透かして、まるで彼女が何も着けていないかのような錯覚を生み出していた。
慌てて目をそらすが、視界の端にその姿がちらつく。
「……!」
動揺した自分の様子に気づかれたのか、玲奈先輩がこちらを見て微笑んだ。
「どうしたの?」
困惑した表情のまま、俺は何とか笑顔を作ろうとした。
「い、いえ……何でもないです。」
ごまかしたつもりだったが、冷や汗が額を伝う。隣にいた友人の佐々木がニヤリと笑う。
「お前さ、今、完全に目のやり場に困ってただろ。」
「そんなことない!」
「いやいや、バレバレだって。」
無邪気に笑う佐々木とは対照的に、俺はますます落ち着きを失っていった。
玲奈先輩は特に気にした様子もなく、「じゃあ、またね」と手を振って去っていった。その後ろ姿を見送りながら、俺は心の中で叫ぶ。
(こんなの……どうすればいいんだ……?)
第2章 ざわめく心
カフェテリアに入っても、さっきの出来事が頭から離れない。トレーを持ちながら、ぼんやりと席を探す。
「おい、しっかりしろよ。何ボーッとしてんだ?」
佐々木が肩を叩く。
「いや、何でもない……。」
俺は適当な席に座り、食事を始めるが、どうにも食が進まない。玲奈先輩の姿が頭の中で何度も再生され、その度に心臓が早鐘のように打つ。
「お前さ、本気で惚れたんじゃないの?」
佐々木がニヤニヤしながら言う。
「そんなわけない!」
慌てて否定するが、動揺を隠しきれない。
「ま、気になるならアプローチしてみれば?」
「いやいや、そんなの無理だって!」
友人の軽口に、俺はただ首を振るだけだった。
しかし、その時。
カフェテリアの入り口に、またしても玲奈先輩の姿が現れた。
俺の視線は、自然と彼女に引き寄せられていった……。
第3章 揺れる距離
玲奈先輩がカフェテリアに入ってくると、まるで周囲の空気が変わったように感じた。彼女はトレーを手に取り、ゆっくりと食事を選んでいる。俺の心臓は、ますます速くなる。
「おい、声かけろよ。」
佐々木が肘で俺を小突く。
「無理無理!」
俺は首を激しく振るが、気づけば彼女の方へ視線を向けてしまう。
すると、玲奈先輩がこちらを見た。
俺と目が合った。
ニコッと微笑む玲奈先輩。自然な仕草なのに、俺はその笑顔に射抜かれたように固まる。
そして彼女は、そのままこちらに向かって歩いてきた。
「席、空いてる?」
俺は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。佐々木がすかさず、「あ、どうぞどうぞ!」と席を指さす。
「ありがとう。」
玲奈先輩が俺の隣に座る。
食事どころではなくなった俺は、スプーンを持つ手が震えていた……。