灯篭を使った撮影について
灯篭の光は、照らすための光ではない。
闇を押し退けるのではなく、
闇の存在をそっと浮かび上がらせる光である。
この撮影では、人工照明を極力排し、
灯篭の揺らぐ明かりのみを頼りに、
身体と空間の距離を探った。
光源は一点。
その不安定な明るさが、輪郭を確定させることを拒み、
身体は常に「現れかけ」の状態に置かれる。
肌は照らされるのではなく、
闇の中から、わずかに呼び戻される。
モデルはポーズを止めない。
灯篭の炎が揺れるたび、
影は形を変え、身体もまたそれに応じて微かに移ろう。
シャッターが捉えるのは、
光と身体が一瞬だけ一致した、その刹那である。
灯篭は、視線を導く装置でもある。
見る者は明るい部分だけを追い、
同時に、見えない部分を想像せざるを得なくなる。
そこに生まれるのは、露骨さではなく、
見る行為そのものへの自覚だ。
この灯りの下で写された身体は、
語らず、主張せず、
ただ「そこに在った時間」を静かに残す。
Short English Version
Lantern-Light Session
Lantern light does not illuminate—it reveals.
It does not push away darkness,
but allows it to remain present.
In this session, the body emerges only partially,
called back from shadow by a single, trembling light source.
Contours remain uncertain,
and the image captures a moment of becoming rather than form.
The model never holds a pose.
As the flame flickers,
body and shadow shift together.
What appears is not exposure,
but awareness—
of light, of time, and of the act of seeing itself.

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個人が特定されれば困る方の撮影