
可愛い顔だが男顔
「可愛い顔だが男顔だよね」
初めてそう言われたとき、私は返事に困った。
褒め言葉なのか、それともどこか残念なことなのか。可愛い、と言われればうれしい。でも、その後に続く「男顔」という響きが、私の心に小さな波紋を広げた。
私の顔は、目が大きくて、眉がくっきりしている。鼻筋も通っていて、口元には少し意思の強さが滲むと言われる。整っているけれど、どこか「可憐」とは違う。少女漫画に出てくる“守られる側”ではなく、どちらかといえば“守る側”の顔。だからだろうか、よく「かっこいい」とか「中性的」とも言われる。
でも、私はずっと「可愛い女の子」に憧れてきた。ふわふわのワンピースが似合って、笑うと頬がまるくなって、目を細めるだけで周囲が優しくなるような、そんな女の子に。鏡の前で口角を上げる。悪くない顔だけれど、どこか「決意」や「意志」のようなものが滲み出てしまう。
ある日、友人が言った。
「あなたの顔、安心するんだよね。なんか、頼りたくなる。」
その言葉に、私はふと気づいた。自分が「可愛い」や「女らしい」といった枠に無理に収まろうとしていたことに。人にはそれぞれの魅力があり、その中に「可愛いけれど男顔」という不思議なバランスもある。それは、“中性的”というよりも、“芯のある優しさ”のようなものかもしれない。
世の中には、いろいろな顔がある。甘さだけの可愛さもあれば、強さの中に潜む可愛さもある。私の顔は、きっと後者なのだろう。頑張る誰かに寄り添い、共に進む力を持った顔。ふんわりとした“可愛い”ではなく、凛とした“可愛い”。
そんな自分を、少しずつ好きになってきた。
そして、また誰かに言われるかもしれない。「可愛いけど、男顔だよね」と。今度はきっと、笑って「ありがとう」と答えられる気がする。

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