
ジャズダンサー|揺れるヌードイメージ
Jazz Dancer: The Nude in Motion
ジャズダンスの身体は、決して静止しない。
たとえ止まって見える瞬間があっても、
その内側ではリズムが鳴り続けている。
私がこのシリーズで向き合ったのは、
ポーズとしてのヌードではなく、
揺れとしての身体だった。
ジャズダンサーの動きには、
型と即興が同時に存在する。
訓練された身体が、
次の瞬間には予測を裏切る方向へと逸れていく。
その不安定さこそが、
この身体を生きたものにしている。
私は指示を最小限にとどめた。
音楽を流し、
空間を整え、
あとは身体がリズムを思い出すのを待つ。
シャッターを切るのは、
動きが「決まった」ときではない。
重心が崩れ、
次のステップへ移ろうとする、その途中だ。
ここで写っているヌードは、
露わになることを目的としない。
衣服を脱ぐことで、
動きの嘘が消え、
身体がリズムに対して正直になる。
それだけのことだ。
揺れる身体は、
見る者に安定した意味を与えない。
線はぶれ、輪郭は曖昧になり、
イメージは常に未完成のまま残る。
だが、その未完成さこそが、
この作品の核心である。
私は男性写真家として、
女性の身体を撮ることの非対称性を意識している。
だからこそ、
踊る身体の主導権を奪わない。
見る側が追いつけない速度で動くことで、
身体は視線の支配から一歩離れる。
このシリーズは、
女性ヌードを「示す」ものではない。
リズムが身体を通過した痕跡を、
かろうじて留めた記録である。
もし観る者が、
像を理解する前に、
揺れそのものを感じ取ったなら――
その瞬間、
このヌードは、
すでに静止画ではなくなっている。

Jazz Dancer: The Nude in Motion
The jazz dancer’s body never truly stops.
Even in stillness, rhythm remains.
This series is not about posed nudity,
but about movement—
trained form giving way to improvisation.
I photograph not the moment of completion,
but the instant of imbalance,
when the body shifts toward what comes next.
Here, nudity is not exposure,
but honesty.
Freed from costume,
the body responds directly to rhythm.
These images do not present the nude.
They retain traces of rhythm passing through the body—
unfinished, unstable, alive.

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