仙川のコミュニティカフェ「posto」

仙川のコミュニティカフェ「posto」

「誰でも、目的がなくても居ていい場所」

仙川POSTO:ゆるやかに人が集うコミュニティカフェ

京王線・仙川駅から徒歩わずか1分。通りを挟んで郵便局の向かいにある、クリームイエローの壁が目を引く建物——それが、2021年3月にオープンした「仙川POSTO」です。

一見カフェのようにも見えるけれど、何のお店なのかは外からではちょっと分かりづらい。けれど中に入ってみると、そこには“カフェ”という枠を超えた、居心地の良い空間が広がっています。

POSTOは、「子どもも大人も、誰でも、目的がなくても居ていい場所」をコンセプトに、クラウドファンディングで資金を集めて誕生したコミュニティスペース兼カフェ。名前の「POSTO」は、イタリア語で「場所」を意味します。

ただの「カフェ」じゃない。

飲み物を注文しなくても、いていい。

POSTOでは、コーヒーなどの飲み物や軽食を提供していますが、必ずしも何かを注文する必要はありません。本を読んだり、チェスをしたり、誰かと話したり、ものづくりをしたり……過ごし方にルールはなく、来た人それぞれが自由に時間を使うことができます。

運営しているのは、「ほんのもり」(調布市緑ヶ丘)を立ち上げた3人の若者、田中東朗さん、富池亮太さん、加賀広樹さん。彼らは、「何かを達成するための場所」ではなく、「ただそこにいることが許される場所」をつくりたいという思いでPOSTOを始めました。

「居場所がない」と感じている人へ。

見えない孤立に寄り添うスペース

田中さんは、POSTOに込めた思いをこう語ります。

「高齢者や子育て世代など、“支援対象”として見えやすい人たちに注目が集まりがちですが、社会には“見えない孤立”の中にいる人たちもたくさんいるのではないか。そういう人たちの行き場になれたらと思っています。」

POSTOは、何が何でも「全年齢が集う場所」にしようと意気込んでいるわけではありません。運営メンバー自身が「楽しくて、居心地がいい」と思える場所にしていこうとするなかで、その自然な空気に惹かれて人が集まってくる——そんな流れを大切にしています。

ルールを壊して、面白さを育てる

「ただの場所」に込めた願い

地域づくりというと、「何のための場所か」「どんな成果を出すか」といった目的を明確にすることが求められがち。しかし、POSTOはその常識にとらわれませんでした。

「場所づくりのルールを破ってみたかった」と話すメンバーたちは、「面白いかどうか」を大切にしながら活動を続けています。

店頭の黒板には「今日は◯◯の人無料」と日替わりメッセージが書かれ、通りがかりの人の心をくすぐります。ある日、「ついに自分の日だ!」と初めて中に入ってきた人もいたそうです。

クラウドファンディングのページには、田中さんのこんな言葉が記されています。

「POSTOという名前には、人が役割や立場を脱ぎ捨てて“ただの人”でいられる“ただの場所”であってほしい、という願いを込めました。」

「正解のルート」からはみ出してもいい

多様な生き方・働き方の実践者たち

POSTOのメンバーたちは、自分たちのペースで活動を続けています。たとえば田中さんは、「読むこと」に特化した学びの場を別で運営し、経済的にも自立。進学や就職といった“正解のルート”にとらわれず、さまざまな生き方・働き方があっていいということを、自ら体現しています。

「自分たちにとって楽しくて、楽で、快適な形を目指していたら、それが今のPOSTOになっていました。知り合いが地域にたくさんいると、何かあったときに助けてもらえる。それって、すごく安心なんですよね。」

これからも、もっと「面白い場所」に

型にハマらない、心地よさを大切に

既存の枠に縛られず、運営者の個性と感性が自然と反映された空間、それが仙川POSTOです。明確な目的やルールに頼らずとも、人が自然と集まり、つながりが生まれていく——そんなPOSTOは、これからもきっと、さらに面白く、魅力的な場所へと育っていくことでしょう。

仙川のコミュニティカフェ「posto」

出会いから学ぶ、働くを考える。 〜仙川POSTOに「Polaris自由七科」を訪ねて