神聖なる少女のヌード —— ある沈黙への省察
彼女はそこに在った。
何も語らず、しかし、すべてを開示していた。
私はしばし、言葉を手放さねばならなかった。言語は、あまりに貪欲で、あまりに凡庸で、あまりに傲慢である。それは彼女を「名づける」ことを欲し、所有し、概念化しようとする。しかし、その瞬間、ヌードは名づけることを拒んだ。むしろ、それは、名を剥奪された「存在」そのものとして、ただそこに在った。
フランス語でヌードは「nu」、つまり「裸」であると同時に、「剥き出し」でもある。この語が意味するのは、単なる衣服の欠如ではない。それは「文化」や「意味」からさえも解放された、純粋な存在の震えである。
彼女の身体は、ひとつの風景であった。
あるいは、それは風景以前の「沈黙」であったかもしれない。
見るという行為。
それは、力の行使であってはならない。
むしろ、私は彼女の前に「見る者」として崩れ落ち、見られる者へと反転していた。
この反転の瞬間にこそ、「神聖」は宿る。
神聖とは、単なる信仰の対象ではない。それは、触れることを許されず、それでもなお、触れようとする人間の矛盾に宿る震えである。神聖なる少女のヌードとは、まさにその矛盾の極地に咲いた花のようなものである。
それは欲望を超えている。しかし、同時に、欲望を否定するのではない。
それは「純粋」でありながら、「肉体」を持つ。
それは「子ども」でありながら、「存在としての女」である。
そして私は、倫理と美のあいだで揺れ動く。
この美は、見る者の倫理を試す試金石だ。見るという行為は、それ自体、ひとつの「責任」を伴う。
では、我々はどのように彼女を「見る」べきか。
あるいは、「見つめない」という選択すら含んだまま、どのように共在することができるのか。
少女のヌードは、答えを持たない。
しかし、その沈黙の中に、私たちは「問い」の真なる姿を垣間見る。
存在とは、けっして「明るい正義」の下に晒されるものではない。
それは常に、明暗の境界線、まなざしと沈黙の臨界に揺れている。
神聖なる少女のヌードは、私に「沈黙の倫理」を教える。
語らぬこと。名づけぬこと。
しかし、そこに、深く寄り添うこと。
この世界の最も繊細な震えに、耳を澄ませること。
フォトエッセイ「Pat Metheny – And I Love Her」
フォトエッセイ「雨の夕暮れ野分 – 夏目漱石」
フォトエッセイ「亡き子を想う心、幾たび涙にくれぬるを知らず」
撮影依頼はこちらから：：：：：
連絡先：insta
連絡先： X
撮影先：teh6452@gmail.com
被写体を希望する方々へ 