+ フォトエッセイ「夏目漱石『門』より抒情詩による再構成」

『門』 抒情詩による再構成

(夏目漱石『門』より着想)

暮れゆく日々の光の中に
小さな家と ふたりの影
宗助とお米は 静かに生きる
罪を背負い 声を殺して

過去は声なく 門の奥に
開かぬ戸口に 風が鳴る
かつて愛した 友の妻
奪ったのは 愛か、それとも――

平穏のなかに 潜む波紋
仏壇の前で 祈るように
宗助の眼は 遠くを見る
贖いとは何かと 問いながら

学僧に会いに 山の寺
悟りを求め 門をくぐる
だが静寂は 何も告げず
ただ木々が風に うなずくだけ

人は皆 門の前に立つ
入るべきか 戻るべきか
宗助はまた 日常へ帰る
お米の笑みが 帰る場所

罪は消えずとも 時は流れ
ふたりの影は 寄り添って
門の向こうに 何があろうと
今を生きる ただそれだけ

Tetsuro Higashi photography

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