写真詩集 「温もり」

「温もり」

昨夜の貴方の手の感触を抱いたまま目覚める朝
空は少し陰り
ここの所の暑さを少し和らげていた

分かり合えない事が多くて
何年もかけて歩み寄って
それでも離れてしまって
もう冷めた仲だと
お互いに思っていた時

二人の歩む道はまた交差した

背負う物が多くて
ストレスでギスギスして
思いやる気持ちも忘れかけていたのに
まるでずっと一緒だったかのように

リビングに行くと
目覚めた貴方がタバコを手に「おはよう」と言う
私も「おはよう」と言う
そんな平凡な事で
私の一日は幸福に包まれた

ただ 過度な期待はしない
ヒステリックにもならない
静かに誓った心には
少し成長した私が居た

書けなかった
もう貴方の事は書かないと
そう決めたかのように

どんな夢を見たのかも聞くのを忘れて
貴方を見送ると
私はまた日常に戻る

ここに貴方の事を記して

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「シューレース」

写真詩集 「底」

底

何かが底を付いた時
しばらくそこに定着して上を見上げる

此処は安定して良いねと
聞こえそうで それでいて更に下があるかのような恐怖

「どんな状況下でも詩を書き続けなさい」と
父が言っているように思えて

底をテーブルに書いてみる
透明なそのテーブルが更に下を映し出すから
ハジにつかまって何とか踏ん張る

ー落ちる!ー
ふとガタついた神経が
テーブルのハジから私を更に下へと追いやる

涙だけが浮上して行き
ドサッと また下に落ちる

痛めた足腰が感覚を取り戻すと
また上を見上げる

私は上に向かっているのか?
それとも下か?

透き通ったその場所でうずくまりながら
ふと上も下もないと…

ただこの大地に足をつけ
遥か上の空を見るのか 
それとも足元を眺めるのか

その違いだと

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「リキッド」

Poem / Photography 「揺るぎないもの」

揺るぎないもの
                 
かたく何かを誓ったかのように
勇気付けられる言葉がある

それは腹の奥底に潜めて
また這い上がる力となる

成長するとは
際限がない事

休んでもまた歩き出す
もうダメだと思っても 手を差し伸べてくれる人が居る

「誇り」
それを持って生きること
困難だった

叩きのめされた自尊心を取り戻す為の作業
そこには沢山の人たちの「愛」があった
「揺るぎないもの」 もう一度…

比べる事も
悲観する事もない
ありのままで

例えまたつまずいても
必ずまた立ち上がる
「生きる力」

「愛」の持つ力をあなどってはいけない

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「写真詩集」

Poem / Photography 「荒れる心」

荒れる心

津波は私の心にも襲っていた
冷たい雨の降る立秋
私は急いで出したカーディガンを羽織って
ベッドに横たわっていた

不安だった
沈黙の中「生きていていいのかな?」と問おうてしまって
その答えが見つからずに
薬を飲んだ

一人な気がした
この世界で
この箱の中で
一人きり 全てから切り離されたかのように

夢を見ているかのようでもあった
ただ 波打つ私の心臓は
大人しくはなかった
大丈夫だろうか?

何度も電話をかけたあの人のことが心配だった
連絡の返事のない人のことも心配だった
生きる理由を見失いそうで
心の波は大きく揺れていた

外気にさらされたかのような
生の心臓は冷え切っていて
そこに流れ込む雨の冷たさは
猛暑の後の急な冷え込みに縮まる想いもしていた

津波…
全てを流し 連れ去ってしまう津波
その本当の恐ろしさも知らずに
私は家猫と同じように
本能を忘れて心を病んだ

荒れる心が
たった一つの灯りを見つければ
それだけでいいと
筆を取った

ただそれだけのことだった

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「揺るぎないもの」

Poem / Photography 「リアル」

リアル

根こそぎ殺(や)られたんだ
この世界のリアルからの切断

何かが欠落したまま
私は今を生きる

あまりに根が深く
どこに向かって行けばいいのかわからない

ただ「生きたい」
もう死んだように息をしているだけの自分は嫌だ

見つめて来た
自分の過去も内面も

暗がりの中でも幸福の中でも
痛みや涙の中でも

弱い私であっても
いつももう一人の私が見つめていた

「もっとリアルに」
「もっと感情を揺さぶって」と

遠くから声が聞こえる
「貴女をここで終わらせる訳にはいかない」と

突破したい
私を囲っている壁全てぶち壊して

リアルへ…

もう一歩先へ
もう一段上へ

自分の脚で
超えてゆきたい

殺(や)られた精神は取り戻せない
それでも諦めない

まだ間に合うから
気付く事が出来たから

らっきょの皮むきでもいい
最後に何が残るのか見てみたい

魂を膨張させて
この壁をぶち破る

見えてくるのは
きっといつか見た風景

それでいい
懐かしさと共に私は生まれ変わる

内から外へ
そしてまた内へ

もっと遠くへ
もっと近くへ

リアルになる

私がなる
本当に「死す」前に
なるんだ

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

v

Poem / Photography 「生き抜くということ」

生き抜くということ

やっとの思いで
狂気から抜け出したのだ
生き抜かなければ

残せるものを残して
生きたい
愛を育みたい

絶望して
全て終わりにしたくなる時も
まだ生きろと導かれる何かがある

生きたいのに
無惨に散る命
儚い命

どん底から這い上がった今
私には生きる義務がある
支え愛してくれる人たちがいる

生きたくても
生きてはゆけない
そんな人々を想う

強く 強くならなくては
いつかそんな人々に捧げる詩が書けるように
祈り続けなくては

無数の魂が取り巻く中
まだ生きたいのだと
みなぎる生命力を感じて

例え明日死んでも
悔いのないように
小さな幸せを噛み締めて

心に感動と愛を
身体は健やかに
日々息をしていることに感謝をして

きっと今からでも出来る

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

m

Poem / Photography 「祈りの輪っか」

祈りの輪っか

一つの輪っかが
一つの輪っかと繋がる

それがまた両方から
もう二つと繋がる

広がる思考
深まる情

輪っかは一つ一つと繋がり
柔らかな鎖を作る

私たちを苦しめるものではなく
きちんと愛で結ぶもの

弱い自分も
情けない自分も
ありのまま全てを
愛し平安を祈る時
輪っかは全世界へと広がる

国境も言語も越えて
文化も人種も乗り越えて
一つの大きな輪っかが出来る

一人で居ても
家族と居ても
恋人や友達と居ても

一つの思考から
全世界へと繋がることが出来る
望めば出来る
祈りの力とはそういうもの

poem : Maya Inoue / photo : Tetsuro Higashi

Poem / Photography 「生き抜くということ」