
紗織はいつも仕事帰りに立ち寄るカフェで、ラテを飲みながら一息つくのが日課だった。その日も、ノートパソコンを開き、今日の出来事をまとめる。キャリアウーマンとして生きる彼女にとって、この静かな時間は唯一の癒しだった。
だが、その日のカフェには彼女の目を引く一人の男性がいた。肩幅が広く、目がどこか鋭い。彼の姿は、紗織に説明のつかない感情を芽生えさせた。
「あの人、誰だろう…?」
名前も知らない彼を目で追ってしまう自分に、彼女は気づいた。

次の日も、その次の日も、紗織はそのカフェに足を運んだ。彼はほとんど毎日、同じ時間帯に現れる。彼が座るのは決まって窓際の席。手にはいつも厚い本。
「あなたもよくここに来るの?」
ある日、紗織は自分の心臓が跳ねる音を感じながら、勇気を振り絞って話しかけた。彼の名前は亮介。紗織が近づくと、彼は微笑み、静かに応じた。二人の会話は自然に進み、その日から彼らは毎日少しずつ話すようになった。
やがて、亮介の声、匂い、仕草すべてが紗織の中で特別なものになっていった。そして、亮介の存在が紗織の「あるがまま」を引き出し始める。

初めての夜、紗織は迷いながらも彼の手を取り、そのまま彼の家へ向かった。背中に触れる彼の温かい指、耳元で囁かれる声。全身が熱を帯び、彼女は自分が「欲望のままに動いている」ことを初めて実感した。
それは不思議な感覚だった。今までの人生で、常に「理性」が彼女を支配してきた。しかし、その夜、彼女は「あるがまま」を生きることがどれほど心地よいかを知った。

翌朝、陽の光がカーテン越しに差し込む部屋で、紗織は目を覚ました。亮介が隣で眠る姿を見ながら、彼女は不思議と不安を感じなかった。
これからどうなるのか、二人の関係がどこへ向かうのか、全く分からない。でも、それでいいと思った。自分の心と身体が望むままに動いた結果を、彼女は受け入れたのだから。
紗織は静かに笑い、ベッドを抜け出して彼のためにコーヒーを淹れ始めた。これが一時の関係であろうと、長く続くものになろうと、「今」を生きることで得られる満足感に、彼女は満ち足りていた。

フォトエッセイ「すべてが一夜にして彼女の手の中からこぼれ落ちた」
フォトエッセイ 「これが私なの?」鏡の前で身を晒した・・

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