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“君は永遠だ。そして、私はそうではない。”
私はじっと像を見つめていた。柔らかなカーブ、張り詰めた緊張感を湛えた肩、そしてなだらかに続く腰のライン。すべてが完璧に思えた。そして、その完璧さこそが不安を掻き立てる。人間の体を模倣したにすぎないこの物体が、なぜこんなにも圧倒的なのか。
“美とは何だろう?”
ふとそんな考えが頭をよぎる。美は私たちが与えた意味の集積に過ぎないのか、それともこの像のように、それ自体で存在する何か純粋なものなのか。私が感じているこの感情は、彫刻そのものに由来するのか、それとも私自身の内なる記憶や経験に起因するのか。
私の視線は像の胸元にとどまる。息を吸い込むと、その瞬間に私の中で何かがはじけたような気がした。それは記憶だった。若かったころ、初めて恋に落ちた日のこと。その人の微笑み、その人の匂い、その人の声。すべてがこの像と重なる。
もちろん、それは錯覚に過ぎない。この彫刻はただの石だ。目の前に広がるのは私の妄想であり、感情の投影でしかない。それでも私はその像を見つめ続ける。見つめるたびに、私の内面が少しずつ掘り下げられていくように感じた。
“君がここにいるのは、僕がここにいるからだ。”
そんな言葉が頭をよぎった。この言葉が誰のものなのか、あるいは私自身のものなのか、それすらわからない。だが、私の中の何かがこの像と対話している感覚があった。
私は一歩引いて、像全体を見渡した。その場に佇む私は、像を鑑賞するだけの傍観者ではない。むしろ、この像と私の間には、目に見えない何かが流れているようだった。それは、生命の欠如に向き合う私自身の存在への問いかけであり、この完璧な造形が示す不変性への羨望だった。

“君は永遠だ。そして、私はそうではない。”
私は呟いた。言葉は虚しくも空間に吸い込まれた。だが、その瞬間、私は少しだけ軽くなった気がした。像は何も答えない。ただ静かにそこにあり続ける。その無言の存在が、私に多くの言葉を語りかけているようだった。
その場を去るとき、私はもう一度像を振り返った。彼女の姿は相変わらず完璧で、圧倒的なままだった。しかし、今度はそれがただの石だということを少しだけ受け入れられる気がした。そして、私は自分の感情がその像に吸い込まれたことで、何かが浄化されたような気分を味わった。
私は外に出て、現実の空気を吸い込んだ。そして、すべてがいつも通りの世界に戻った。それでも、心の奥には、あの像が刻んだ何かが確かに残っていた。

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