
写真は町田市境川にて、8月中旬に撮影
まず大前提として、「地下水○%、河川水○%」という都内全域の単純な比率は公表されていません。東京都の水道は、区部と多摩地区で水源構成が大きく異なり、さらに季節や施設の稼働状況によって変わります。
そのうえで、公開資料から大きく整理すると、次のようになります。
東京都の水道水を大きく分けると
| 地域 | 主な水源 | 地下水の位置づけ | 硬度の傾向 | 水の印象 |
|---|---|---|---|---|
| 23区 | 利根川・荒川・多摩川などの河川水・ダム水 | 非常に小さい | 約60~70mg/L中心 | 軽く、すっきり |
| 多摩東部 | 河川・ダム+地下水 | 比較的大きい | 50~90mg/L程度 | まろやか |
| 多摩西部 | 地下水+多摩川系など | 地域によって大きい | 20~70mg/L程度 | 軽快・すっきり |
| 町田市 | 地下水+広域水源 | 地下水源あり | 地下水系では100mg/L前後の地点も | ミネラル感が比較的ある |
| 調布市 | 地下水+広域水源 | 地下水源あり | 中程度 | まろやか |
| 多摩全体 | 地下水+表流水・伏流水 | 重要 | 地域差が大きい | 地域差が大きい |
東京都水道局によれば、都営水道26市町には、現在地下水(井戸)277か所、表流水・伏流水25か所があります。ただし、これは「水源施設の数」であって、水量の比率ではありません。(東京都水道局)
① 23区は「河川・ダムの水」が中心
東京23区の水道水は、基本的に
利根川・荒川水系
+多摩川水系
などの広域水源を浄水処理したものです。
特に利根川水系については、
金町・三郷・朝霞・三園・東村山浄水場
の5浄水場すべてに高度浄水処理が導入されています。(東京都水道局)
つまり現在の23区の水道水は、
「昔の東京の水」=カルキ臭い水
とはかなり違います。
高度浄水処理によって、かび臭・有機物・カルキ臭の原因物質などをかなり低減しています。
② 多摩地区は地下水の存在感が大きい
ここが23区との最大の違いです。
多摩地区26市町では、
地下水(井戸)277か所
が水源として存在します。
しかも東京都の資料によれば、地下水の揚水量は近年減少傾向にあるものの、現在も多摩水道の重要な水源です。(東京都水道局)
したがって、
「東京の水=全部河川水」ではありません。
特に多摩地域では、地下水の存在を無視できません。
ただし、277か所あるからといって「多摩の水道水の○%が地下水」という意味ではありません。
井戸ごとの揚水量、浄水所の稼働状況、広域的な水運用などがあるためです。
③ 地下水と河川水では「硬度」が違う
これは非常に興味深いところです。
東京都水道局も、
一般的に地下水のほうが表流水より硬度が高くなる傾向がある
と説明しています。(東京都水道局)
地下水は地中を通る時間が長いため、
カルシウム・マグネシウム
などのミネラルを取り込みやすいからです。
そのため、
河川水中心
→ 比較的軟らかい
→ 軽い
→ すっきり
地下水中心
→ ミネラルがやや多い
→ まろやか
→ 多少「コク」がある
という傾向があります。
④ では東京都の水は「軟水」なのか?
結論は、
東京都の水は基本的に「軟水」です。
東京都水道局の令和6年度の平均硬度は、
61.4 mg/L
でした。(東京都水道局)
日本で一般的に使われる分類では、100mg/L前後までは軟水~中程度の水として扱われることが多く、ヨーロッパの硬水地域とはかなり違います。
東京都水道局自身も、東京の水道水は季節や水系によって違うものの、
概ね50~100mg/L程度
と説明しています。(東京都水道局)
つまり、
東京の水=軟水だが、超軟水ではない
と考えるのが一番近いです。
⑤ 都内でも硬度にはかなり差があります
ここが面白いところです。
東京都水道局の令和4年度データでは、
最高:89.7mg/L
最低:19.6mg/L
という大きな差がありました。
最高値は練馬区・江東区、最低値は青梅市です。(東京都水道局)
つまり、
青梅の水
と
練馬・江東の水
では、同じ「東京都の水道水」でも、ミネラル量がかなり違います。
これは水源・浄水施設・配水系統の違いによるものです。
⑥ 「おいしい水」という観点ではどうか?
東京都水道局は「おいしい水」の基準として、次のような項目を重視しています。
| 項目 | おいしい水の目安 | 東京都令和6年度平均 |
|---|---|---|
| 硬度 | 10~100mg/L | 61.4 |
| 蒸発残留物 | 30~200mg/L | 120 |
| 遊離炭酸 | 3~30mg/L | 4.4 |
| 臭気度 | 3以下 | 1未満 |
| 残留塩素 | 0.4mg/L以下 | 0.4 |
| 水温 | 20℃以下 | 18.3℃ |
全体として、かなり「おいしい水」の範囲に入っています。(東京都水道局)
⑦ 個人的な「おいしさ」の違いを予想すると
かなり大ざっぱに分類すると、私はこんなイメージを持ちます。
🥇 多摩西部の地下水系
青梅・福生・あきる野など
比較的硬度が低く、
「軽い」「すっきり」「雑味が少ない」
という方向。
🥈 町田・調布など地下水を利用する地域
「まろやか」「少しミネラル感がある」
という方向。
特に町田の木曽周辺の地下水源では、過去の水質年報で硬度100mg/L前後の水源も確認できます。
🥉 23区の広域水源
高度浄水処理によって、
「クセがない」「すっきり」「非常に均質」
という方向です。
昔の東京の水道水にあった「カルキ臭い」というイメージは、現在ではかなり当てはまりにくくなっています。東京都はカルキ臭やかび臭の低減を含めた独自の「おいしさに関する水質目標」を設定しています。(東京都水道局)
⑧ 私なら「東京の水」をこう分類します
最も軽い水
青梅などの一部多摩西部
↓
まろやかな水
調布・町田など地下水を利用する地域
↓
標準的な東京の水
23区の広域水源系
↓
ミネラル感の強い水
多摩地区の一部地下水源
というイメージです。
ただし、これはあくまで水源・硬度から見た傾向で、「おいしさ」は個人差があります。
そして非常に重要なのが「PFAS」
現在、東京都の水道水を比較するなら、単純な
「地下水だからおいしい」
だけでは不十分です。
地下水は水源によってPFASの影響を受ける可能性があり、東京都水道局もPFOS・PFOAを継続的に検査しています。東京都の水質データでは、浄水場・給水所ごとのPFOS/PFOA検査結果を確認できます。(東京都水道局)
一方で、水道水として供給されている水は、水質基準に基づいて管理されています。
ですから、
「地下水だから安全」
「河川水だから危険」
という単純な話ではありません。
結論:東京都の水道水は「地域差」が面白い
東京都全体を一言でまとめるなら、
23区
→ 河川・ダムなどの広域水源中心
→ 高度浄水処理
→ 比較的均質
→ 軟水
→ すっきりした味
多摩
→ 河川・ダム+地下水
→ 地下水の存在感が大きい
→ 地域による硬度差が大きい
→ 軟水~中程度
→ 地域によって「まろやかさ」が違う
という構造です。
そして、「水のおいしさ」という観点では、必ずしも地下水100%が最高ではありません。 硬度は低すぎても淡白になり、高すぎても口に残るため、東京都水道局も「適度な硬度」を重視しています。(東京都水道局)
もし「東京都で水道水がおいしい地域ランキング」を作るなら、23区+26市町を対象に、①硬度、②PFAS、③残留塩素、④地下水比率、⑤高度浄水処理、⑥水源の種類を組み合わせて、**「東京の水がおいしい市区町村ランキングTOP10」**のように整理すると、かなり面白い比較になります。