電車が止まったとき そこにあなたが立っていた

電車が止まったとき そこにあなたが立っていた

左手に革の赤い鞄を下げ 右手には鎌を握りしめて
あなたは血の滴る鎌を私に向け そして少し微笑んだ
何という美しさ 聡明な瞳 その足の靴下の白さ

あなたは私の横に座り 鎌と鞄を床に置いた
いつの間にか電車は走りだし 遠く向こうに黄金の稲穂が揺れている

そうなんだ あなたはあの稲穂を刈り取り 今ここにいる

私はこれからどこに行くのだろう
いずれにせよ 私はあなたと共に行くだろう
あなたは私の女神なのだから

窓からは首を刈り取られた稲穂の列が延々と続き
田んぼの水はどこまでも真っ赤だ

なんという爽快な眺めだ
今まで ただ遠くから眺めることしかできなかった
これらの黄金の稲穂の列は今や
私の女神の鎌によってきれいさっぱりと刈り取られている

電車は赤い田んぼの中をゆっくりと走る

あなたはけれどしゃべらない
真直ぐ前を向いたまま 私を見ようともしない
あなたの瞳には何が見えているのか
私は不安になって
あなたを覗き見た

こんにちは とあなたが言った
あなたに鉛筆をあげるわ とあなたが言った
大事に使ってね とあなたが言った

あなたは六角形のラクダマークの鉛筆を
六本 そっと私に手渡した

電車が止まってあなたは鎌と鞄を持って
私を振り返り すこし微笑んで さよなら
と言ってそのまま降りて行った

本当はあなたと一緒に降りたかったんだ
でも なぜか足が動かなかった
私は六本のラクダマークの鉛筆を握りしめ
少し噛んでみた

セルロイドの匂いとシンナーの香りが
私を酔わせて 私は眠った

電車は赤いたんぼの中を走り続けている

text by Syoudou Sawaguchi

コメントを残す

コメントを投稿するには、以下のいずれかでログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中