俺は雪虫なのだ・・

雪虫がひとかたまりになって
数日の命と引き換えに
盲目の連鎖を紡いでいるのが見える

儚いといえば儚い
しかし儚くないものなどがありえるのか
雪虫のひたすらなる命の営みを
越えるものなどがありえるというのか

階段を下りて厚いドアを開ける

瞬間全く別次元の音が弾け出し
俺の体をうち叩いて転げ回る

ウッドベースが内蔵へと潜りこみ
俺の体を揺り動かして支配する

強烈なラッパと不協和するサックスが
俺の体を切り刻んで離さない

壁にぶつかり反射しながら駆けまわる
不協和音がふっとおさまり
クレーの天使のような音が
鍵盤をほろほろ紡いで歩き出す

俺は雪虫なのだ
盲目の衝動に支配されながら
メスを求めて止まない
一匹の雪虫なのだ

一回限りの交わりと引き換えに
己の命を差し出して止まない
一匹の雪虫なのだ

ぽろぽろ歩いていたクレーの天使は
今やこの密室の空間を斜めに横切り
天井から机にと床からカウンターへと
自在に己の足跡を残しながら飛び回る

厚い扉を閉めて階段を上る

そこにはすでにさきほどの
無数の雪虫が死に絶えて
その残骸が無残に重なりあい
やがて降る雪を待っている

音もたてずにただ待っている

 

text by Syoudou Sawaguchi

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